『出会う。vol.2』(今夜、art space tetraで開催された即興演奏のイベント)について

 

■出演
おちょこ(voice)
河合拓始(鍵盤ハーモニカ他)
直江実樹(ラジオ)
中村勇治(reeds)
moyanmn(電子音楽


出演者すべて腕のあるプレイヤーで、心地よい演奏の楽しいイベントだった。
これが、例えばgigi(今年の5月に閉店した)で開かれたイベントであれば、何の引っかかりもなく良いイベントだと言えただろう。gigiはアバンギャルドな表現にも開かれているとはいえ、基本的には(ルーツミュージックや攻撃的なパンクなども含む)ポップスの場所だからだ。

ここで問題となるのは、特定の文化の雰囲気を感じさせる和声や音色だ。ポップスではこれが問題になることは少ない。ポップスは様々な文化から雰囲気を借用するものであるという了解が、演奏者とリスナーの間にあるからだ。一方、アバンギャルドな表現においては、演奏者の奏でる和声や音色がどこかから借りてきたものでないか厳密に問われなくてはならない(あるいは借りてきた元がどこなのかを明示しなくてはならない)。

どんなパフォーマンスであれ、観客がその表現を理解するには何らかのよすがが必要だし、即興のパフォーマンスにおいて雰囲気の借用が理解を助けるということはある。その上で、それがほとんど問題とならない場と、それに注意を要する場がある。
そして、今夜のパフォーマンスにおいては、それは観客を白けさせてでも厳密に為されなくてはならなかった。tetraはアートの場所だからだ。

終演直後に「三味線入れたら良いところがあったな!」と大きな声で言う観客がいて、それはパフォーマンスに対する敬意に欠ける発言ではあったが、聴く者にそれを言わせる要素が今夜のパフォーマンスに含まれていたのだ。